手塚治虫にも影響か!? 学天則生みの親、西村真琴博士のロボット哲学 [ロボット]
◆「地球は人間だけのものではない-エコロジスト西村真琴の生涯」(畑中圭一著)という書籍が、名古屋のゆいぽうとという出版社から発行されている。
帯には、日本初のロボット「学天則」をつくった男、といった一文が添えられている。
そのロボットとは、先日、取材したばかりの7月から大阪市立科学館で一般公開される学天則そのものに間違いなかった。
「大東亜科学奇譚」(荒俣宏著、筑摩書房)という学天則を詳述した本を探していた時に、京都の書店で出会ったのが、「地球は-」であった。
もちろん迷わずに買った。
そこにはロボット博士西村真琴とは別の一面が書かれていた。
「地球は人間だけのものではない-エコロジスト西村真琴の生涯」
◆学天則と言えば、4月に復元品が完成したというので、取材したばかりだ。
ボクが初めて学天則の存在を知ったのは、荒俣宏の小説「帝都物語」を読んだ時20代の頃だった。映画化もされた。第一印象はただ不気味さであった。
忘れかけていた学天則のことを耳にしたのは2007(平成19)年の夏のことだった。
大阪市立科学館主催の電子工作教室に大阪・日本橋のでんでんタウン電子工作教室の講師が出張講義に出向くことになり、同行取材を許された時のことだった。
電子工作教室2日目の学外研修として、学天則の復元製作過程を見学する機会を得たのだった。
数10年前にその存在を初めて知った学天則を目の前にすることができたのは、実に感動的だった。
もっとも作業は、まだ頭部の製作の途中だった。
しかしそれは正真正銘の学天則に違いなかった。
それから8ヶ月。
2008年4月になって大阪市立科学館から、学天則が完成したので7月の一般公開に先駆けてマスコミ向けに内覧会を開催する、といった案内が届いた。
もちろん喜んで出席の返事を出し、再び学天則と出会うことになった。
内覧会当日は24社ものマスコミが集まった。
ボクのインターネット媒体である「ロボメディア」はミニコミである。
そのぶん目立たなくてはいけないから、ボクは会場に1番に到着して、会見を待っていた。
ただミニコミと言っても、読者はグローバルに点在しているので、正確にはグローバルコミュニケーションを略して”グロコミ”なのかもしれない。
◆さて長くなったが、その学天則とは如何なるものなのか。
もったいぶるようだが、詳しくは「ロボメディア」の、4月24日付けの記事=http://robomedia2006.blog.so-net.ne.jp/2008-04-24 をご覧いただけばいいが、「地球は人間だけのものではない-」には、1928(昭和3)年11月4日付けの「サンデー毎日」に西村が掲載した「『人造人間』ガクテンソクが生まれるまで」という論文の1部を紹介しており、そこに学天則の仕組みに少し触れている。
要約すると次のようになる。
「円滑な表情を実現するために、ガクテンソクの動作の機構の原動力は空気の膨圧力を利用している。力を強く出したり、太く緩く出したり、一時的運動や継続運動を行い、しかもうるさい音響を伴わないためにも、無尽蔵な空気を利用することは最も合理的であった」
「人形を人間らしく認めさせるためには、必ず表情がなくてはならない。しかも表情が1人でも引き付けるためには、機械的運動以上に感じさせる芸術性を伴う必要がある」
さて、「地球は人間だけのものではない-」には、西村博士の生い立ちに始まり、植物学者であり詩人、画家、環境科学者、そしてロボット科学者など、多彩な能力を持ったマルチ人間であったことが綴られている。
当初ボクは、東洋初のロボットを製作した科学者といったイメージを持っていたのだが、実際はロボットは彼にとってほんの一部の才能でしかなかったようだ。
その多彩ぶりといろんなものに興味を持つ姿は、手塚治虫を連想させた。
また西村博士は、北大教授の職を捨てて大阪毎日新聞社へ入社するのだが、彼が大阪で住んだのは豊中市であった。
こんなところにも豊中市生まれの手塚との因縁を感じる。
西村が大阪毎日新聞社に移るきっかけとなったのは、1927(昭和2)年に大阪毎日新聞社が募集した論文に「50年後の太平洋」で選外佳作5篇のひとつに選ばれたことだった。
西村はその論文で1980年頃の太平洋を中心とした自分の予言鏡に映る事象を描いた。
そこに登場するのが「殺魚光線」を使って行う漁業である。まるでSF小説や漫画のような発想である。
この光線は、一度に大量の魚が獲れる効率的なものだったようだ。それによる魚資源の枯渇を防ぐために、魚の養殖振興も挙げている。
さらに太平洋に埋もれる資源の保護と開発を目的とした汎太平洋漁業会議の日本での開催と、太平洋を学術的に研究、利用する汎太平洋学術研究所を設置するといった構想も提唱している。
また、海風の風力エネルギーの利用や波動エネルギーを使って海底沈殿物を採取し、それを地上の荒廃地に肥料として利用するといったこも提案している。
こうした科学知識に裏づけされたアイデアの数々は、まさしく手塚治虫と共通している。
◆毎日新聞に入社した西村は、自然科学に関する解説記事やエッセーを書いていたというが、1928(昭和3)年に京都で開催された大礼記念博覧会に大阪毎日新聞社が出品する展示物として、西村は学天則を考案し、製作を行ったのである。
博覧会では学天則は人々の度肝を抜き、大人気を博した。
しかし、ただ人気取りだけの奇抜なからくり人形を作ったのではなかった。
彼にはロボットに対する思い入れがあった。
それは「地球は人間だけのものではない-」で、ロボット製作の意義として述べている。その要旨は次の通りだ。
「人造人間が多くなるにつれて、人造人間のために人間が征服されるような世の中がやって来ることを想像するに難くない。物質文明の極みは、その文明によって人間が滅ぼされてしまうということを風刺している。この意味において便利主義一点張りの奴隷的人造人間の出現については驚きの一面に、天地の傑作である人間を真似作るだけではなく、将来を考慮して尊い理想を人造人間に打ち込むべきだ」
◆手塚治虫が鉄腕アトムで描いたロボットにもまた、尊い人間の理想を見ることができる。西村博士の論文を手塚が読んでいたかどうかはわからないが、大阪から生まれて世界を代表するロボットになった学天則と鉄腕アトムには、地球上のあらゆる生き物同様に尊厳を認め、どのように人と共存していくかという点が開発・創作段階で盛り込まれていたことで共通しているようだ。
今後のロボット開発の思想の基盤となるもののようにも思える。
帯には、日本初のロボット「学天則」をつくった男、といった一文が添えられている。
そのロボットとは、先日、取材したばかりの7月から大阪市立科学館で一般公開される学天則そのものに間違いなかった。
「大東亜科学奇譚」(荒俣宏著、筑摩書房)という学天則を詳述した本を探していた時に、京都の書店で出会ったのが、「地球は-」であった。
もちろん迷わずに買った。
そこにはロボット博士西村真琴とは別の一面が書かれていた。
「地球は人間だけのものではない-エコロジスト西村真琴の生涯」
◆学天則と言えば、4月に復元品が完成したというので、取材したばかりだ。
ボクが初めて学天則の存在を知ったのは、荒俣宏の小説「帝都物語」を読んだ時20代の頃だった。映画化もされた。第一印象はただ不気味さであった。
忘れかけていた学天則のことを耳にしたのは2007(平成19)年の夏のことだった。
大阪市立科学館主催の電子工作教室に大阪・日本橋のでんでんタウン電子工作教室の講師が出張講義に出向くことになり、同行取材を許された時のことだった。
電子工作教室2日目の学外研修として、学天則の復元製作過程を見学する機会を得たのだった。
数10年前にその存在を初めて知った学天則を目の前にすることができたのは、実に感動的だった。
もっとも作業は、まだ頭部の製作の途中だった。
しかしそれは正真正銘の学天則に違いなかった。
それから8ヶ月。
2008年4月になって大阪市立科学館から、学天則が完成したので7月の一般公開に先駆けてマスコミ向けに内覧会を開催する、といった案内が届いた。
もちろん喜んで出席の返事を出し、再び学天則と出会うことになった。
内覧会当日は24社ものマスコミが集まった。
ボクのインターネット媒体である「ロボメディア」はミニコミである。
そのぶん目立たなくてはいけないから、ボクは会場に1番に到着して、会見を待っていた。
ただミニコミと言っても、読者はグローバルに点在しているので、正確にはグローバルコミュニケーションを略して”グロコミ”なのかもしれない。
◆さて長くなったが、その学天則とは如何なるものなのか。
もったいぶるようだが、詳しくは「ロボメディア」の、4月24日付けの記事=http://robomedia2006.blog.so-net.ne.jp/2008-04-24 をご覧いただけばいいが、「地球は人間だけのものではない-」には、1928(昭和3)年11月4日付けの「サンデー毎日」に西村が掲載した「『人造人間』ガクテンソクが生まれるまで」という論文の1部を紹介しており、そこに学天則の仕組みに少し触れている。
要約すると次のようになる。
「円滑な表情を実現するために、ガクテンソクの動作の機構の原動力は空気の膨圧力を利用している。力を強く出したり、太く緩く出したり、一時的運動や継続運動を行い、しかもうるさい音響を伴わないためにも、無尽蔵な空気を利用することは最も合理的であった」
「人形を人間らしく認めさせるためには、必ず表情がなくてはならない。しかも表情が1人でも引き付けるためには、機械的運動以上に感じさせる芸術性を伴う必要がある」
さて、「地球は人間だけのものではない-」には、西村博士の生い立ちに始まり、植物学者であり詩人、画家、環境科学者、そしてロボット科学者など、多彩な能力を持ったマルチ人間であったことが綴られている。
当初ボクは、東洋初のロボットを製作した科学者といったイメージを持っていたのだが、実際はロボットは彼にとってほんの一部の才能でしかなかったようだ。
その多彩ぶりといろんなものに興味を持つ姿は、手塚治虫を連想させた。
また西村博士は、北大教授の職を捨てて大阪毎日新聞社へ入社するのだが、彼が大阪で住んだのは豊中市であった。
こんなところにも豊中市生まれの手塚との因縁を感じる。
西村が大阪毎日新聞社に移るきっかけとなったのは、1927(昭和2)年に大阪毎日新聞社が募集した論文に「50年後の太平洋」で選外佳作5篇のひとつに選ばれたことだった。
西村はその論文で1980年頃の太平洋を中心とした自分の予言鏡に映る事象を描いた。
そこに登場するのが「殺魚光線」を使って行う漁業である。まるでSF小説や漫画のような発想である。
この光線は、一度に大量の魚が獲れる効率的なものだったようだ。それによる魚資源の枯渇を防ぐために、魚の養殖振興も挙げている。
さらに太平洋に埋もれる資源の保護と開発を目的とした汎太平洋漁業会議の日本での開催と、太平洋を学術的に研究、利用する汎太平洋学術研究所を設置するといった構想も提唱している。
また、海風の風力エネルギーの利用や波動エネルギーを使って海底沈殿物を採取し、それを地上の荒廃地に肥料として利用するといったこも提案している。
こうした科学知識に裏づけされたアイデアの数々は、まさしく手塚治虫と共通している。
◆毎日新聞に入社した西村は、自然科学に関する解説記事やエッセーを書いていたというが、1928(昭和3)年に京都で開催された大礼記念博覧会に大阪毎日新聞社が出品する展示物として、西村は学天則を考案し、製作を行ったのである。
博覧会では学天則は人々の度肝を抜き、大人気を博した。
しかし、ただ人気取りだけの奇抜なからくり人形を作ったのではなかった。
彼にはロボットに対する思い入れがあった。
それは「地球は人間だけのものではない-」で、ロボット製作の意義として述べている。その要旨は次の通りだ。
「人造人間が多くなるにつれて、人造人間のために人間が征服されるような世の中がやって来ることを想像するに難くない。物質文明の極みは、その文明によって人間が滅ぼされてしまうということを風刺している。この意味において便利主義一点張りの奴隷的人造人間の出現については驚きの一面に、天地の傑作である人間を真似作るだけではなく、将来を考慮して尊い理想を人造人間に打ち込むべきだ」
◆手塚治虫が鉄腕アトムで描いたロボットにもまた、尊い人間の理想を見ることができる。西村博士の論文を手塚が読んでいたかどうかはわからないが、大阪から生まれて世界を代表するロボットになった学天則と鉄腕アトムには、地球上のあらゆる生き物同様に尊厳を認め、どのように人と共存していくかという点が開発・創作段階で盛り込まれていたことで共通しているようだ。
今後のロボット開発の思想の基盤となるもののようにも思える。
プラネタリウム見に行くついでに、いつも眺めてます。
映画の学天則は、私も見ました。いきなりはちょっと抵抗ありますね。
ただ、Wikipediaで調べてから見たら、よくぞ復元してくれたと思えます。
by はたはた (2009-04-16 21:25)
wTVN)fj/, speak.ginzamoonlight.com, やっぱり見た目通りエロかったです, http://speak.ginzamoonlight.com/osaka/92.html
by やっぱり見た目通りエロかったです (2011-04-17 11:13)
お疲れ様でした
by ポールスミス 財布 (2011-08-29 10:52)
勉強になりましたとても良かったです。
by ポールスミス バッグ (2011-08-29 10:52)
お日記拝誦いたしました、中々いいですね
by ポールスミス 財布 (2011-08-29 10:52)
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by apple コンピューターバッグ (2011-09-20 11:48)
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